なんだかんだで長年小説を書いてきましたが、小説を書く上で気をつけていることは何か、といわれると…………
……いわれるとなんだ? ええと、いっぱいあります。
で、今回は、そのうちの一つ、表記について語ってみようかと。
けっこうマジメな内容なので、興味のある方だけぜひ><
この場合の表記っていうのは、同じ言葉でも、平仮名にするのか漢字にするのか片仮名にするのか、ってことです。
私は作風によって、ある程度文体を変えると同時に、表記も変えます。
たとえば、「エランシリーズ」は漢字多め、「現実サーガ」なんかは漢字少なめです。具体的には、何、事、者、物あたりを漢字にするのか平仮名にするのか。最初に、ある程度決めてから書き始めます。
セリフをいう人物によっても変えます。「ヴァストークの歌姫」のグリーヴァとかは片仮名ばっかり。あとは、その時に表したい事柄によって変えたりなんたり。セリフうちなら、ら抜き言葉やちょっと間違った表現を意図的に使うこともしばしば。
日本語ってすばらしいですね!
表記だけで三種類も。表現できる幅ってとてつもなく広いと思います。
学生時代、日本語を研究してました。
「お茶でも飲もうよ」、の「でも」とは!? 「映画でも観に行かない?」の場合、映画じゃないといけないのか!? みたいな発表やったりなんたり。やー楽しかった。
で、私が卒論でやったのが、
「日本語の表記 ──平仮名表記、片仮名表記、漢字表記の使い分け──」
だったのです。
一般書籍や雑誌等を調べたり、アンケートを作って様々な年代の方にご協力いただいて、表記によってどう印象が変わるのか、どう使い分けられているのか、を研究しました。
以下、卒論の一部を抜粋。
<漢字表記>
どのような場面にも,幅広く使える表記法である。ただし,普段あまり使わないような表記(我が侭,何れ,殆ど……等)は,かえって違和感を伴ってしまう場合が多い。他に,特徴として,主に以下の四点が挙げられる。
① 堅い雰囲気を伴う
② 重い雰囲気を伴う
③ 具体的,物質的である
④ 語によって,時代の古さを表す
<平仮名表記>
語によっては,漢字と同じく広い場面で用いることが可能である。もの,いう,やわらかい,あたたかい,さみしい,すてき,おおきな,ちいさな……等は,平仮名表記にしても違和感はない。しかし,普通漢字で記すような語(使用頻度のあまり多くない語であると考えられる)を平仮名表記にするのは違和感を伴う。すいはんき,だいりせき,こうみんかん,こっとうひん,げんしゅく,だいだいてき……等がこれである。これらを平仮名表記にするのは,特別な意味を表す場合である。平仮名表記の特徴としては,主に以下の四点が挙げられる。
① 意味を排除し,音だけを表す
② やわらかい,あたたかい雰囲気を伴う
③ 幼い雰囲気を伴う
④ 女性的な雰囲気を伴う
<片仮名表記>
一般には用いられないため,文のなかで片仮名表記は目立つ存在である。片仮名表記の特徴として,主に以下の五点が挙げられる。
① 意味を排除し,音だけを表す(平仮名表記よりもその効果は強いと考えられる)
② 目立たせ,注目させる
③ 軽い雰囲気を伴う
④ 若者言葉を表す
⑤ 他と区別し,特別なニュアンスを加味する
これらの特徴は,あくまで,現代の一般的な表記のなかでのものである。例えば,片仮名表記ばかりの小説のなかでは,片仮名表記よりも漢字表記の方が目立つ存在となり,特別な意味を持たせることも可能となる。片仮名表記が他と区別する役割を担うのは,現在の表記として片仮名が主流ではないからである。実際に,滅多に漢字表記にしないような語については,片仮名表記よりも漢字表記の方が目を引いている例が多くあった。
表記の使い分けは,例えば倒置法や体言止めなどの表現法と同じぐらい,文の意味を左右するものだと考えられる。それどころか,表記法を使い分けることで,倒置法や体言止めなどでは表しきれないような,微妙なニュアンスを描き分けることが可能となる。勿論,形式的な文書,重要書類などは,できるだけ漢字表記しなければならず,漢字表記するのが当たり前であるが,こと表現の世界については,表記の使い分けは非常に大きな可能性の拡大につながる。
堅っ苦しいな、オイ!!!
まあでも、このブログを見てくださっているのは物書きさんが多いと思うので、興味もあるのではないかと発掘してみた次第でした。
でもまとめだけ載っけてもわかりにくい…かな。アンケート載せた方がおもしろかったかも。後日そっちを載せるかもです。
っていうかもう、卒論まるごと載せるか? グラフとかすっごいたくさんあるけど(笑
ちなみに、かの有名な松尾芭蕉さんが、「最近の若者言葉はなっとらん」とか言っていたそうです。いつの時代も、似たようなこと言われながら生き残っていく言葉は生き残っていくんだな、としみじみ。
日本語大好きです!!!(告白
日本語の研究をされていたんですね。
表記の使い分け、とても興味深く読ませてもらいました。
普段何気なく使ってる日本語ですが、研究したらすごく奥深いんですよね。
実は私は、社会人になってから、日本語教師養成講座に通ってたことがあります。
それは外国人に日本語を教えるための教育なので、日本語研究とはまた違った角度からの勉強だったんですが、「お茶でも飲もうよ」の「でも」とは、とかそういうのやったな~って思って、懐かしく思い出してました。
でも、情けないことにほとんど忘れちゃいましたけど。
私も光太朗さまが書かれた最後の部分、同感です。「最近の若者言葉は……」って本当に昔から言われてきたんだな~って私も思いながら、生き残ってく言葉は生き残ってくんですよね。
言葉は生き物だから、変わっていっていいと、私はそういう風に思ってます。
私も日本語ってとても綺麗で素敵な言葉だと思います。
私は昔から英語を勉強していて、今は縁あって韓国語を勉強してますが、やっぱり日本語は美しいと思ってます。
(韓国人からしたら、韓国語が世界一美しいらしいですが。笑)
というわけで、なんだか私も長々と語っちゃいました。
またこういう興味深い題材がありましたら、載せてくださいね~。
わたし、私、ワタシ、わたくし等々・・・
なんとなく使いわけていましたが、理論的に説明をされると「なるほど」です。
光太朗様の登場人物の使う言葉が人物によって
違うなあと思っていたのは・・・・なるほど。
何か、ちょっとこの記事を読んで得したような気分です。
卒論を全部読みたい蛙でした。
ちょー感動!って感じ。蛙的にもこれは使えるかも・・・!です。
なんかぁ、蛙って影響されやすいっていうかぁ。
すみません、若ぶって疲れました。
日本語も光太朗様も大好きです!!!(告白
日本語は正直面倒くさいっす。作家がこんなこと言うのもどうかと思いますけど、正しい日本語って本当にどういうものなのか分からない。そういう面で見ると、今の日本語を1から学ぶ外国人にはほんとご愁傷様でしたとしか……。
どこかの日本語翻訳者の論文があって、日本語の表現が様々だから、それを他国語に翻訳するときにどう翻訳するかは自分の感性次第で非常にやり辛いという意見があった気がします。
多彩な表現は美しいが故に扱いがたい。な、なんてレベルの高い世界なんだ……。
んまあ、日常生活で使う分にはもう、バリバリですがね。自由性の高さと面白さで言えば、もう世界言語第一位に上り詰めるんじゃないかと。
母国語最強ぉぉぉ!!でもめんどくせぇぇぇ!!
おおお、あれですね、これはもう語り合いたいですね夜明けまで!!
私が通っていた大学のコースも「日本語教育」でした。ボランティアで日本語を教えてたりもしたんですが、どうにもそっちにはあまり興味が持てず、結果、趣味に走ったのですが(笑
そうですよね、言葉は生き物ですよね。だからこそ、楽しい><
私は日本語しかろくに知りませんが、英語なら英語、韓国語なら韓国語で、きっとその言語にしかない表現の幅があるのだろうなあと思います。でも私は日本語がスキっっ。
それにしても意外な日本語教育フレンドですね!! そんでもって大変な勉強家ですね、文樹妃さま>< とても嬉しいコメント、ありがとうございました!
>青蛙さま
意識せずとも、使い分けてる方も多そうですよね>< っていうか青蛙さまが「あおがえる」となっていると、なんか妙にかわいいというかなんというか幼子のよう。表記パワーってスゴイ。
誰も読まないかなと思ったんですが、食いついていただいてチョーウレシーミタイナー(もう古い;
ぜひ表記使いこなしてくださいませ>< 愛してますジュッテーーーーームっ
>蜻蛉さま
わあい、蜻蛉さまからコメントいただくと、なんだか嬉しい光太朗です。ありがとうございます><
他作品の評価、ですか…! な、なんだろう、できるだけつっこんだ評価はしないことにしてるんですが……私多分、思うままにやったらおっそろしく酷評するタイプだと思うので…;;
ら抜き言葉なんかは、気にせず読む読者も多いのだろうと思います。~させていただく、あたりはもう許容されているようですし、やっぱり言語は変わっていくものですねえ…。
外国の方に教える日本語というのは、活用形が楽なので、基本は「です・ます調」なんですよ。ちょっとでも楽に、しかも丁寧、で一石二鳥……ですが、敬語とか絡んできたらお手上げでしょうね……。
面倒臭い、確かに(笑 手のかかる子ほどかわいいということで! 蜻蛉さまはあれほど素晴らしい表現力をお持ちなんですから、愛してやってください、母語! ビバ日本語っっ><
書くときに「とき」「こと」「もの」などはいつもどっちにするか考えて使います。とはいえ、たいてい趣味でひらがなになってしまうのですが(笑)
日本語の研究されていたんですね。理系の自分からは相当遠い世界です(汗
でも、日本語は大好きです。海外旅行してそれをさらに実感しました(笑)
実はひらがながお好きという記事を拝見していて、コメント欄に長々と書きかけたんですが、こんなに語ってどうするつもりだいつかブログでやろう、と思い直したのです。私も好きです、ひらがな。やわっこくて。
「とき」「こと」「もの」、あたりは迷いますよね。一般的にはひらがなが多いみたいですが。
好きな教科は数学なんですけど、好きなことは小説なので、それだけで進路が決まりました; 人生エンジョイです。
若いコの「ら抜き言葉」に、国語教師の身分を隠してバイトに来ている男性が困惑する。みたいな話でした。ことわざでも、今と少し前では意味が違うのもあって、お互い歩み寄っていくという。。。
むか~しは漢字は男性が使う字体。ひらがなは女性が使う字体だったようですし(今の解釈では違うかもですが)、奥が深いですよね~♪
私小説書きじゃないけど面白い。
確かに表記は人によって様々ですねー。
私は「事」は「こと」にするようにしてます。
別に深い意味はないんですが何となく…。
日本語って面白いよね。
「ら抜きの殺意」! ものすごく惹かれる題名ですね…! 題名でここめで惹かれるってすごい。おもしろそうです。
そうなんですよね、そういう歴史があるんだから、ひらがなが女性的だというのは当たり前といえば当たり前ですよね。でも、全文ひらがなだったりすると大変なことになりそうですが;;
>さくら野郎さま
わたくし、さくら野郎さまの小説大好きですが。もちろんイラストもね! イラスト描いて送ってね☆(ドサクサ
「事」って重い感じするもんね。「物」もそうかなあ。
日本語はおもしろいです。使いこなしましょう! レッツセイ、しょにー!!!