とりあえずアップ。
完結しました。
適当な感じが全面に押し出されてますが、おまけだからイイヨネ☆
ちなみに私は、こういうことがとっても好きなので、なんか「こんなんどーよ」的なことございましたら教えて下さい。ふつーの二次創作も好きです。おたくなんで(元。
いうまでもないですが、「小説」としてのクオリティはおっそろしく悪いので、1から5まで一気に読むなんて暴挙はダメですよ!! 粗がこれでもかと見つかりますよっ><
莉啓の中華一番 5
チャーリーによる実況試食が終わり、一般審査員の試食が始まった。
試食開始の合図とともに、二時間以上も腹を空かせて待っていた野次馬たちが、わらわらとなだれ込んでくる。実況を聞きながら、まずどこに行くかを考えていたのだろう。ロープがはずされると同時に、それぞれが目当てのテーブルへ突進していった。
無論、莉啓のテーブルも例外ではなかった。
大勢が、皿とフォークを手に押し寄せて来──たのだが。
誰一人として、五つ分のテーブルを飾る料理の数々に、手を伸ばすことができなかった。
そこには、独立した空間が生まれていた。
「さあ、悠良。スープと前菜と……メインは何がいい?」
「そうね、少しずついただくわ」
五つ並んだテーブルの中央に、どこから持ち出したのか妙に立派な造りの椅子を配置し、悠良が当たり前のように悠然と腰かけていた。
ナプキンを首からかけ、莉啓が運ぶものを少しずつ口に運ぶ。
明らかに、他から浮いている行為であるはずなのに、なぜかまったく違和感がなかった。
好奇な令嬢の食事風景が、できあがっていた。
「……た、食べたいけど……」
「食べられない……」
得物を手にした野次馬たちが、生唾を飲み込む。
手を伸ばそうものなら、莉啓の絶対零度の視線が突き刺さるのだ。食べるな、と諫められるのではない。ただ、視線。
しかし、それだけで充分だった。
誰一人として、莉啓の食事を食べようとはしなかった。
かといって、他のテーブルに行くこともためらわれるのか、大半はその場にとどまって、遠巻きに悠良の食事を眺めている。
異様な光景だ。
「動物園の餌やりじゃあるまいし」
あきれ果てて、そうつぶやきながらも、怜は一般審査員に扮してたらふく食事をいただいている。こっそりとテイクアウトの準備をすることも忘れない。
「さあ、審査まであまり時間がございません! よろしいですか、これだ、と決めた料理人の名前を書いて、こちらに投票して下さいね! 食べるだけじゃだめですよ! 一票を! 清き一票を!」
首から箱をぶら下げて、チャーリーが練り歩いている。他にも、エラット家の使用人らしい人物が数人、投票箱を持って立っていた。
そうして、結果発表。
参加者は、広場の中央に集められた。当初の目的を忘れているのかなんなのか、莉啓はやりきったという顔で背筋を伸ばして立っている。割烹着姿ではあったが。
「食べ過ぎたわ」
淡々と悠良が述べた。それはそうだろう、と怜が遠い目をする。そんなことなら、自分にぐらい食べさせてくれてもよさそうなものなのに。
「一般審査員の点数がゼロなんだから、だめだろうね、啓ちゃん。残念、大収入のチャンスだったのに」
「無銭でこれだけ飲食できたのだから、充分なんじゃないかしら」
「まあね」
確かに、金五百がないにしろ、たらふく食べて、おみやと食材も手に入ったのだから、充分すぎるほどだ。
悠良も怜も、結果発表にはほとんど注意を払っていなかった。何か他の儲け方を模索しないと、と思考はすでに遠くにある。
だから、聞き逃した。
歓声が飛び交い、拍手が巻き起こったときには、二人は顔を見合わせただけだった。
「おめでとうございます! 莉啓選手、優勝、おめでとうございます!」
なぜかチャーリーが涙を流している。
怜は、思い切り眉間に皺を寄せた。
「……優勝?」
そんなばかな、という続きすら声にならない。
なぜ優勝。悠良の好物を作っただけで、試食すらさせなかったのに。
「あら、すごいわね」
悠良の声にも、あまり感動がこもっていない。
「ええ、審査の声ですが──『わたしも、あんなふうに尽くされたい』、『ひとりの主人にだけ心を開く様子に感動した』……などなど、莉啓選手の悠良さんへの奉仕の精神が得票に繋がったようです! 莉啓選手、喜びの声を一言」
「俺の料理がすごいのではない。料理を求める悠良の味覚が、素晴らしいのだ」
その声に、さらに大きさを増す歓声。
「そういうことよね」
「……この場合、どっちにつっこめばいいんだろう……っていうかナンダコレ、なんの大会?」
知っていたはずの現実だったが、よりその重さを増している気がして、怜が呻く。どうしたものか。この二人についていけるのだろうか、自分は、本当に。
「ええ、では、主催者でいらっしゃいます、キャンディ=エラット様から、賞金とトロフィーが手渡されます。さあ、莉啓選手、こちらへ」
チャーリーに促され、莉啓が数歩前へ出た。
ずっと様子を見守っていたのだろう、広場の隅のテントから、淡いドレスの少女キャンディ=エラットと、道化師の仮面の青年とが、ゆっくりとした足取りで歩いてくる。
「莉啓さま──」
金髪の美少女は、震えるほどの小さな声で、莉啓を見上げた。
「その精神、速さ、もちろん味も、完璧でございました。おめでとうございます」
彼女の手には大きすぎるほどのトロフィーを差し出す。さすがに金五百は重いのか、賞金が入っているであろう箱は、道化師仮面が代わりに手渡した。
緑色の衣服を翻し、道化師仮面は、そっと莉啓の手を取った。小声で、囁く。
「おめでとう、陰険術師」
莉啓だけに聞こえる、小さな声。莉啓は、眉を跳ね上げた。
「──貴様っ!」
「今日はなんというめでたい日でしょう! 今日このときを持って、エラット家の新しい料理長が決定致しました!」
道化師の仮面を投げ捨てて、翠華はそう声を張り上げた。トロフィーを持った莉啓の腕を高々と掲げ、周囲に向かって宣言する。
「エラット家の新料理長決定をかけた料理人選手権、優勝は莉啓選手です! 拍手──!」
町中の人間が参加しているのではないかというほどの拍手が、響き渡った。
「料理長、だと?」
「知らなかった、じゃすまないよ。拒否するなら、賞金もナシ。お金入んないんじゃ、悠良嬢は悲しむだろうねえ」
翠華の口調は完全におもしろがっている。莉啓は反論しようとして、口をつぐんだ。確かに、この場で拒否できるようなムードではない。主催者側は、恐らく翠華にそそのかされたのだろう。
はめられたのだ。
「どうりで。既視感があったのよね。怜、あなた、気づいてたわね?」
「誓っていうけど、共犯じゃないよ」
悠良の問いに、怜はちょっとだけ目をそらす。気づいてたかといわれれば、もちろん否定はできないのだ。
「……それにしても、手の込んだいたずらだな。よっぽど暇なんだな、翠華」
「本当ね。お母様にいって、強制送還してもらおうかしら」
拍手喝采を浴びる莉啓の姿に、二人はまったく実感が湧かない。まるで他人事のように、観衆に撤している。
「助けに行ったほうがいいかしら」
莉啓は何やらコック帽まで授与されていた。悠良のつぶやきに、怜が返す。
「自分でなんとかするでしょ。翠華も気がすんだんだろうし」
それでも、このまましばらくは、この町に滞在せざるを得なくなりそうだ。笑みの形に唇を上げ、怜は続けた。
「それに、いい商売思いついた」
***
それからしばらく、町には、一流の料理人を目指す人々が集うこととなる。
それはそれは高貴なお嬢様が、料理の批評を安価でしてくれるという噂が広まったからだ。彼女の批評は実に手厳しく、そして的を射ていたので、実力向上を望む料理人が我先にと料理を持ち込んだ。
「さすが怜、ただでは起きないね」
当たり前のように怜の隣に居座り、満面の笑みで翠華が褒め称える。怜はかつての相棒を一瞥した。何もかもが、この男の思い通りであるような気がして、おもしろくない。
「おまえさあ、いいから手伝えよ。あと、啓ちゃん帰ってくる前に姿消しといた方がいいんじゃないの、刺されるぞ、包丁で」
「怖くないね、陰険術師の包丁なんか。──あ、料理人の方ですね、こちらへどうぞー」
それでも、翠華はちゃんと手伝っていた。板についた様子で、代金を受け取り、厨房へと通す。厨房の奥では、悠良が優雅な食べ放題を満喫しているはずだ。
「それに、あと十日はエラット家から出られないんじゃないかな。あそこの料理人に料理を伝授し終えるまでは料理長やる、っていう話になったみたいなんだよね」
そう語る翠華の目が、少年のようにきらきらと輝いていて、怜は嘆息した。怜と莉啓も仲の良い方ではないのだろうが、ここまでではない。
「なんか、俺の方が啓ちゃんに刺されそう……」
絶望的なつぶやきが実現するのは、それからまさに十日後のことだ。
そんなこんなで幕を閉じた、料理人選手権。
短期間で料理テクニックすべてを伝授した莉啓は、『エラット家伝説の料理長』として、後世まで語り継がれることになる──
最後までお付き合いいただき、ありがとうございました><
面白かったです。蛙もこういうの大好きで、それもERRANTのだからテンションが上がりっぱなしでした。
料理選手権だったのが、終わってみれば莉啓の尽くす姿で点を取っているという摩訶不思議。
伶でなくても「えーっ?」となりますよね。
翠華も久しぶりに伶とコンビを組めてよかったね。
「俺の料理がすごいのではない。料理を求める蛙の味覚が、素晴らしいのだ」
と、言ってもらいたい蛙でした。
今回は、とってつけたような題で頼んだ小説を素晴らしく楽しい話にしてもらって蛙は寿命が延びました(年寄りくさいですね)
やっぱり愛し、愛されるって・・・素敵。
って何を言ってるんだか・・・(たぶん伶のつっ込み)
私は読んでもらうことにテンション上がるタイプ(感想いただいた日には夕食はすき焼きかステーキかみたいな)なわけなので、毎回コメントいただいた日々が本当に幸せでした。イラストも描いてもらったし><
完全にノリとイキオイで始まってイキオイのまま終わりましたが(笑)、最後までお付き合いいただき、ありがとうございました!!
大感謝でございます><>< ジュッテーーーームっっ(気に入ったらしい/笑
う~ま~い~ぞ~!って、一回やってみたいです(現実で)
最後まで走り抜けられる光太朗さんは、やっぱりすごいです!
面白かった~怜が一番の気苦労さんっぽく見えるけど、反面ちゃっかりさんなので、3人がうまく回るんだろうな~♪
伝説の料理長!そして食べられなかった審査員は、執事カフェに走りそう(爆
うーまーいーぞー、は言ってみたいよりも見てみたいです、セリフというより現象を(笑
執事カフェ! なるほど(笑 莉啓がそこで働くと金になりそうですね(いや、悠良限定だからダメか;;
コメント、本っっ当に嬉しいです! ありがとうございました><