そんでもって、なんだかんだで三日連続載せてるとかって、どんだけヒマなんだって話ですね。
いや、忙しい……ハズなんだけどなー。
ところでこれ、青蛙さま以外だれか読んでくださってるんだろうか──いや、追求し始めると哀しいからやめとこう。
なんだかんだでノリノリで書いてます!
第三話!!!
莉啓の中華一番 3
料理人選手権、エントリー人数百二十三人。
うち、本選に残ったのは、たったの十人。
筆記試験における上位十名だけが、本選会場へと案内された。
「筆記試験が厳しすぎるとお思いの方もいらっしゃるでしょうが、一般家庭の料理番程度では本選に出る資格もないということを、ご理解いただきたい!」
屋外の本選会場──エラット家の所有する多目的広場であるらしい──で、真っ赤なスーツを着てそういい放ったのは、髭のたくましい中年男性だった。
一般人も審査員として参加できるということで、ロープの張られた会場の周囲には、ほとんど町中の人間が集まってきている。これ幸いと、菓子やら飲み物やらを売り歩くものもいれば、ちょっとした屋台まで並び、完全にお祭りムードだ。
「えー、ちなみにワタクシ、実況ひと筋この道四年、チャーリー=ビックルでございます。今回の料理人選手権、実況を務めさせていだたきますので、どうぞヨロシク!」
会場が妙にざわめいた。
この道四年。それは果たして長いのか短いのか。
「この催し物、誰が何の得をするのかしら」
アシスタント、という形で、レースのエプロンに三角巾姿の悠良が、鋭いところに目を向ける。同じく、新妻風エプロンを身につけさせられた怜は、どう答えたものかと眉根を寄せた。
「金持ちの道楽ってことなんじゃないの」
本当は、ある可能性に思い当たっていたが、口に出さないでおく。前方で聞き耳を立てている莉啓に、食材といっしょに鍋に放り込まれてはたまらない。
「いいか、貴様、邪魔だけはするな。何もしないでそこに突っ立っていろ。存在そのものが邪魔なのに、このうえ手出しをするようなら、問答無用で煮込むからな」
昨日のエスケープ事件を根に持っているのだろう、莉啓の全身から不機嫌オーラが見える。煮込む、というのもおそらく比喩ではあるまい。調理台の横に用意された、異様に大きな鍋が目に入り、怜の背を冷や汗が伝った。
「りょーかいです、おとなしくしてます、お母さん」
怜は右手を額に当てる。敬礼。
当然のことだが、莉啓の怒りオーラが増幅する。
「誰が貴様の母親だ……!」
「いや、だってさ、あんまりはまってるからつい!」
弁解しようとするものの、怜はどうしても吹き出してしまった。
参加者の中で、唯一エプロンの類を持参しなかった莉啓に手渡されたのは、輝かしいばかりに真っ白な、割烹着だった。
割烹着に身を包み、丸い白帽子をかぶって、包丁を構える莉啓。
そのチョイスに、何者かの悪意をひしひしと感じる。
「怜、いちいち喧嘩をふっかけるのはやめなさい。素直にいえばいいのよ」
ある意味では恐ろしいほどにエプロンスタイルの似合わない悠良が、そっと莉啓を見上げた。
「だいじょうぶ、似合ってるわ」
「……ありがとう、悠良」
莉啓はちょっぴり泣きそうだった。
うしろで、悠良ちゃんナイスといいながら、怜が笑い転げている。
「──えー、皆々様、準備はよろしいでしょうか! 本選のテーマは、『貴方にしかできない究極の料理、ただしデイリーに食べられるメニュー、隠し味はズバリ愛』、でございます! 会場中央にある食材を、どれだけ使っていただいてもかまいません。もちろん、あとで金よこせとかはいいませんのでご安心を! 制限時間は、二時間! ──始めぇぇえ!」
ボワワワァァン、と銅鑼が鳴った。
エラット家が用意した楽隊が、音楽を奏で出す。
「金かかってんなー」
「お金持ちの考えることって、わからないわね」
指示どおりおとなしくしておこうとする怜と、手伝う気など毛頭ない悠良が、完全に観客気分で感想をもらした。
「さあ、始まりました、世界の料理人選手権! さすが、筆記試験上位十名の手練れたち、動きが違います! さばきが違います! フライパン遣いが違います! おおっと、ここで筆記試験トップの莉啓選手、蛙を手に取った──! まだ生きている、まだ生きている新鮮な青蛙です! 東洋では蛙すらも料理に使うというのは有名な話ですが、本当に使うのでしょうか! どうでしょう、解説の道化師仮面さん」
「さー、どうでもいい」
「なるほどー! お? しかし、莉啓選手、蛙の背中を何やらさすって、優しく声をかけた! おおっとこれは意外だ、料理に使うのではなく、地面に放した! 蛙は、名残惜しそうに何度も何度もふり返り、去っていきました! これは、料理人である前に一人の人間、生きた生物は使わない、という優しさでしょうか?」
「さー、知らない」
「ちょっと聞いてみましょう。──莉啓選手、いま蛙を逃がしましたが、あれはどういう…………はあ、はあ、なるほど。みなさん、聞こえましたでしょうか! 俺は蛙は料理しない主義だ、とのことです! 何か特別な恩でもあるのでしょうか。──お、今度は優勝候補と名高いオムロン選手、生きたウサギに包丁を入れた──! オレはなんだって料理してやるんだぜ、という対抗心が見て取れます! あからさまです、やらしいです!」
「料理人なんだから、なんでも使う、に賛成」
「解説の道化師仮面さんは、オムロン選手寄りの意見ですね。っていうか莉啓さんに特別冷たくないですか? あ、キライなタイプ、それはまたどーしょーもないご意見ありがとうございます。──お、今度は唯一の女性参加者、ナターシャ選手、これは素晴らしい包丁さばきだ! あれは、魚、魚でしょうか。魚がまるで大輪の花のように変貌していきます! しかしなんということでしょう、世界中のどこを探しても、これほど生臭い花にお目にかかれることはありません! ──おおっと、今度は最高齢参加者のゲルル選手、持ち上げられない! 鍋が重い! これは予想外のアクシデントか! アシスタントも同じく高齢です! 三人がかりで鍋を──おおっと、ひっくり返した──! ギブアップ、ギブアップです、ゲルル選手!」
まるで戦場だった。
さすが実況ひと筋四年、チャーリー=ビックルの実況は途切れることを知らない。
実況席に座る、道化師の仮面をかぶった『解説者』はというと、チャーリーのテンションに反比例しているかのようなやる気のなさだ。
「この調子で、二時間か」
思わず、怜はぼやいた。
それは疲れる。
「もし優勝しなかったら、この時間、無駄ってことよね。怜、あなた、暇なら裏工作でもしてきたら?」
ちょっと散歩してきたら、とでもいうように、実にさらりと悪事をそそのかされ、怜は悠良の行く末を憂えた。こんな子じゃなかったような気がするのに。いや、気のせいかもしれないが。
「いいよ、それこそ啓ちゃんに煮込まれそう。手出しするなってことは、優勝する気満々なんじゃないの」
「意外とプライド高いわよね」
意外か? と怜は思ったが、突っ込まないでおく。悠良と怜に見せる顔がまるっきり別人なのだ。二人の『莉啓論』が同じになるとは思えない。
莉啓は、すぐ後ろで座り込んでいる二人には目もくれず、一心不乱にマイ包丁を操っていた。切られた食材が弧を描き、勝手に鍋に投入されていく。その真剣な横顔に、汗が光る。割烹着姿が眩しすぎて、怜は直視しないようにするのに必死だ。
「莉啓、何か手伝うことはある?」
よほど暇だったのだろう、座ったままの状態だったが、悠良がそう声をかけた。莉啓は手を止めて、ふり返る。
「悠良、その言葉だけで充分だ」
目を細め、幸せ百パーセントの表情で、そっと微笑んだ。
「そう」
悠良、あっさり引き下がる。
なんだかやってられない気分で、怜はあさっての方向を見やった。その目に、まっさらな皿の山が入る。できあがった料理を盛りつけるためのものだろう。
「まー、優勝するだろうとは思うけど」
それでも、路銀の足しになるだろう──怜は、日持ちしそうな食材を、せっせと皿に乗せ始める。これだけ暇な思いをするのだ、食材をいただいていくぐらい許されるはず。
悠良は、何やら自分の役割を見つけたらしい怜を眺め、よりいっそう暇な気分になった。
「もし優勝しなかったら、私が何か働こうかしら」
そのつぶやきを聞きつけて、莉啓の闘志がより一層燃え上がる。
そんなこんなで二時間。
開始時と同じく、銅鑼の音が、会場中に響き渡った。
つづく!!!
あせった~!
このまま鍋に放り込まれるかと思ったら・・・。
目と目が合った途端、「何でここにいるんですかっ!」
と、莉啓に助けられてもう、フォーリンラブ!
背中をやさしくですねぇ・・・延々続く。
「おばさん、早く話しをすすめろ!」伶、ごもっとも。
今回は腹を抱えて笑ってばかり。
生臭い花のとことか。割烹着のとことか。
もう、最高っす。
やる気の無い解説の翠華もいいねえ。
伶も貧乏臭くてとっても良い!
「やあ、今日から背中は洗いません!」宣言!
もう内輪盛り上がりの道をまっしぐらですが(笑
いやね、あれですよ、食材の山にお姿をお見かけしたので、スルーするわけにはいかず…(これも延々続く。
ほんと、毎回のコメントとても嬉しいです。ありがとうございます><