現さま→チヤさま→藤夜さま→碧檎さま→nicoさま→青蛙さま→愁真さま→水菜さま→光太朗、です。
こないだやったばっかりなのに>< っていうか水菜さま、ためらいとかなんもなく回したな!?(笑
ちょうど時間あったので、書いてみました。
そしてそのまま逃げます。
私にとってはこっちの方がある意味カオス。ハチが人間になる展開にしかけたんですが、さすがにやめました>< な、なんかそういう空気でもない、よね??
というわけで最初に指名。
次は愛する文樹妃さまです!!
どうかどうか、よろしくお願いいたします!
では、十秒後、光太朗が逃げたことを確認してから続きをどうぞ・・・・・・・
☆ヲタと腐女子とジムヲタの事情(仮題)
(↓現君がつくったイントロダクション)
言ってみれば僕と彼女は時計の長針と短針みたいなものだ。異なるベクトルを指してはいても、二人ともオタク趣味という軸を中心に回っている。
そして時々、その指針が重なることもある。
「結局さ、現実の人間だって歩くタンパク質なわけじゃん。そして絵だって厳密には二次元じゃなくて色素って三次元の物体から成ってるわけでしょ? 映像とかもおんなじ話。だから人間を好きになるのもアニメや漫画のキャラを好きになるのも根本的には一緒なんだよ。私たちは胸張ってオタクであるべきだぜ!」
ものすごい屁理屈なのだけれど、この主張で僕はこいつの株を市場が荒れるくらい暴騰させた。
もっとも、こういうファンダメンタルな考え方は共通しているのだけれど、やはりそこはオタクと腐女子。彼女にネコミミの素晴らしさやチラリズムの高尚な精神が理解できないように、僕にだって筋肉紳士なんてもの理解できるはずもなかった。
******
休日の日曜。アクティブな連中が健康的に街に繰り出しているだろうその日、僕は健康なオタクらしく日がな一日パソゲーにいそしんでいた。
今プレイしているのは『ストリート・ハート・エレキテル☆』というノベルゲームだ。主人公は自称・街角スターの従姉と同棲していたのだが、その従姉がプロデビューを果たすことで二人の生活と関係がしだいに変わっていくという僕としてはなかなかに楽──
「つまらん。さっさと終わっちゃえよ」
背後からの声が僕の感想を一刀両断する。振り返るまでもなく誰だかわかる。そもそも僕のオタク趣味を知る人間は彼女しかいない。
パソコンをやるとき、リビングには冷房を効かせてある。長時間やってるとパソコン自体が異様に熱を帯びるからだ。そんな居心地の良い場所をハイエナのごとく嗅ぎつけた隣人は、みれば勝手に僕の茶碗で白米を頬張っていた。
「どうせ最後はくっついてハッピーエンドで終わりっしょ? 先が見えてるねそんなゲーム」
「お前はまたそうやって人の気分を台無しに……」
「そんなのより一緒に『マッチョ売りの少女』やろうぜ! なんなら昨日手に入れた体験版『マッチョ売りの僧侶』でもいいけど」
「なんで僕がそんな危険臭漂うBLゲームを堪能せにゃならんのだ」
「二人でやれば筋肉も二倍なんだぜ」
「二人なら喜び二倍みたく言うな!」
******
(↓ここよりチヤテイストブレンドします。)
「二人なら喜び二倍みたく言うな!」
そういって今日も彼は、あたしのボケに適切な突っ込みを入れた。あたしはブーブー文句を言うと、彼にBLゲームをやらせるのを諦めた。
いつもと同じやりとり、会話。それが今日も繰り返されてる。
女友達がみんな彼氏とデートをしている日曜日、あたしは当たり前のように彼の家に遊びに来ていた。そして白飯を頬張りながら、彼がパソゲーをやるのを邪魔している。
彼の広い背中。それに寄りかかって、あたしは友人から借りたBL漫画を読んでいる。筋肉質で美麗な男どもがくんずほぐれつしている絵を見ながら、あたしが何を思っているか彼は知らないだろう。あたしたちの関係は結局そんなもので、そしてそれを望んだのはあたし自身だった。
気の合う友人、オタク仲間、心の友。
すごく近い所にいるけれど、あたし達は彼氏彼女ではない。部屋に二人きりだって甘い雰囲気になることはないのだ。あたしが彼を好きだって、彼は知らないから。
自分の気持ちを素直に言える女だったらよかったのに。言いだすタイミングは何度も訪れたし、今の関係を崩すチャンスだってあった。だけどその度に臆病風に吹かれて、あたしは結局彼への気持ちを口に出して言うことができなかった。
「ふりかけ無い? 白飯飽きた」
せいぜいあたしが言えるのはこんな言葉くらいだ。
「ふりかけ? お前がこの間のりたまの袋ちゃんと閉めないから、しけって捨てた。ゴマ塩でも振って食えよ。っていうか、お前なんで飯食ってるんだ?」
「お腹すいたし。それに、この家にはろくな菓子がないから。食玩のラムネ、飽きた」
あたしはそういうと彼の背中に体重をかけた。
そっけなくしないで。かまって。そんなこと言えないから、態度で示してみる。すると寄りかかられて重いのか彼の体が傾いた。
「お・も・い。ったく、近くにコンビニあるんだから買ってくればいいだろう?」
けれど彼の目はパソコンのディスプレイに向かっていて、あたしの方を振り返ってはくれなかった。
あたしが彼に気持を伝えられない理由の一つは彼のこの態度だ。あたしのことを女としてみてないどころか、ゲームのヒロインばかりを見ている。他の女、それも2次元美少女が相手では太刀打ちできないではないか。彼女達はかわいくて、素直で、地味でひねくれ者のあたしとは正反対なんだから……
あたしがしょんぼりしていると、ふいに彼が背中を押しあげてきた。そして、振り返ってあたしを見る。彼の太い黒ぶち眼鏡からのぞく瞳が真っ直ぐにあたしを見ていて、瞬間心臓がとび跳ねた。
「……鞄の中に、ポテトチップスが入ってる」
「え? ああ。分かった。ありがと」
期待したような展開が起きるはずがない。あたしはため息をつくと立ち上がって彼の鞄を取りに行った。
あああ! 何やってんの、あたし!?
何のために『あれ』を買ったんだ?……あたしのいくじなし!
その時だった。
ピポローンと調子っぱずれの呼び鈴が鳴った。
その不快な音を聞いた瞬間、嫌な予感があたしの中を過った。日曜日、彼の家を訪ねて来る人間と言ったらあいつしかいない。
彼が玄関の扉を開けると、そこには予想どおりあいつが立っていた。
そう、彼の親友で幼馴染の男……あたしの恋のライバルが。
******
(↓ここより藤夜。)
そう、彼の親友で幼馴染の男……あたしの恋のライバルが。
いろんな面で、恋のライバル。彼の部屋に来てあたしの存在を目にしても尚、そのまま彼の指定席で胡坐を掻いてまで、空気も読まずに(ってまあ、あたしが勝手に心臓をコサックダンスさせてる状態にしているだけって話もあるけれど)居座り続ける、この男の名は遥と言う。
あたしの『伊吹』というありきたりな名前とは雲泥の差で、“インパクト大”という感じの名と体のギャップ。まるで女の子――それも、如何にもギャルゲーに出て来そうな萌展開のその字面――の様に可憐な名前の癖に、こいつの上腕二頭筋は、うっかり妄想暴走の危険性を孕んでいる程見目麗しいシロモノで。
悔しい事に、あたしは遥の上腕二頭筋だけは、認めていた。勿論、ヴィジュアルとしてだけなんだけど。どうしてその隣にいるあたしの密かな想い人、恵夢ではなく遥のなんだ、と、コイツを見るたびむかむかする。
更に気に食わないのは、こうして恵夢と並んでいると、むかつく位に『萌えカップル』として成立出来てしまいそうなくらい、様になってしまうという所。
筋骨隆々・遥の隣にいると、あたしにとっては広いに違いない彼の背中も、とても華奢に見えて来る。体のラインが細くて肩ギリギリまで伸びた髪もやらかく扇風機の風にたなびかせる、受け専に見えなくもない華奢な恵夢。
心の中では自分の事を『あたし』と言ってるあたしだけど、そんな二人に入り込めない素の自分が悔しくて、彼らの前だけでは、あたしは無理して男言葉を使ったりして、必死にその輪に入ろうと足掻いてる。本当は、そんな自分のことが何より嫌いで、遥が来る度にこんな想いを痛感するから、あたしは遥の恋のライバルだとウザったくて仕方がないんだ。
解ってるよ、八つ当たりだって事くらい……。
共に過ごした時間の長さ、隣にいる違和感の無さ度、彼からの信頼度、彼を信頼して素を出せているか否か、という素直さも――どれをとってもあたしは遥に敵わない。本当は、ライバルなんていうのさえおこがましい、という事だって解ってる。
だけどね、そう簡単に引っ込めないのよ、あたしが唯一心の支えにしてる事。
それは、恵夢はノンケ、あたしは女。その点だけは、遥に一歩先んじてるって自負心がある。だから、そんな絶対的優位のあたしが、おめおめと諦める訳にはいかないのよ。
あぁっ! 此処であたしがハブられ気分だ、なんていじけてこの部屋を後にしたら、その後の二人の展開を想像しただけで――あぁっっっ!!
「伊吹……お前、今また何かよからぬ妄想してただろ?」
「はっ!」
我に返ったあたしの視線は、気付けば恵夢の黒縁眼鏡の向こうの蔑む瞳とガチっていた。うぉぁっ! 至近距離過ぎるっ! これ以上、あたしの心臓にコサックさせないでぇっ!
そんなあたし達を見下ろす様に、マッチョ・遥があたしに毒を盛る。
「大体お前よ、“つるむの大好き”が特徴の女の一員なんだからよ。折角の日曜、毎週此処に来るんじゃなくて、女友達とか彼氏とかいねえのかよ。何でそんな毎週恵夢んトコに入り浸ってニンニク白飯食ってんの?」
だからどうしてあんたが気づいて、肝心の彼が全く気付いてくれてないんだっつの! 遥のそういうところも、あたしはメガギガテラマックスにガチでもう大ッ嫌い!
「悪かったな! くせぇならお前が恵夢ん家に来なきゃいいだろ。にんにくライスが好きなんだから、放っておけよっ」
本当は、恵夢に内緒でニンニクライスを食わせて『肉体改造計画』なんかを目論んでるんだけど。二次元美少女・レイナとのプレイに没頭されてて、いつもあたしが始末の為に食べてるだけ。
「……伊吹が好きなのは、にんにくライスだけなのか?」
突然そんな核心を突かれて、あたしは言葉を失ってしまった。恵夢本人の前でこいつったら何て事を!
自分の恥を採る? それとも恵夢の貞操を守る選択をする?
「う……ぁ……うゎあああぁぁぁぁぁあぁああぁっっっ!」
ごめん、恵夢、大好きだけど、死んでもまだあんたにあたしの本音は晒せない。
呪いをかけるが如く、マッチョ・遥に
「恵夢の処女を奪ったら、私がお前の上腕二頭筋を千切り取ってやるからなっ!」
と捨て台詞を吐いて、泣く泣く恵夢の部屋を飛び出した。
******
「あいつは……やっぱり、また何かよからぬ妄想をしてたのか……」
僕は心底寒気を覚え、ついはるの方を向くのを躊躇ってしまった。
当然ながら、はるも僕も思い切りノンケな訳で、伊吹の一人芝居にこうして毎回溜息をつく。
ただ、今日は、はるも伊吹も何かおかしかった。
伊吹は相変わらず人の背中で寒くなりそうなBLの同人誌を読みながらも、何処か上の空でこっちの様子ばかりを伺ってた。
そしてはるは、今まであんな風に伊吹の敵愾心を煽る様な挑発なんてした事が無かったのに……。
「なぁ、はる……一つ確認しておきたいんだけど。まさかさ、お前あんな腐女子の伊吹に、マジもんになった、とかないよな、まさか……」
って、ちょっ、お前何してんだ! 折角モニタ省エネ設定で、1分後にオフる設定にしてるのに、マウス動かしちまったら、たった今までノベゲしてたのがモロバレじゃんかっ!
「お。すげぇ、一応ネギで重要ポイントを隠してるんだ。でもこれって完全に著作権侵害だよな。初音ミクのぱくりじゃん」
「んな事ぁどうでもいいんだ、早く僕のパソの前から離れろ!」
うあぁぁぁぁぁああ! 伊吹じゃないけど、僕も思い切り叫びたいっ!
何が一番虚しいかって、近しい友人や家族に、R指定のエロゲしてたのがバレる事。だから、伊吹以外の奴には、例えはるでも、いや、親友のはるだからこそ、絶対バレたくなかったのに。
「お前さあ、いい加減気付いてやれば? 高校で伊吹と同じサークルに入ってから、もう二年は経とうとしてるんだぜ?」
俺でさえ解るのに何でメグが解らんのだ、と問うている、はるの質問の意味が解らなかった。
「えーっと、遥サン、僕、仰ってる意味が解らないんっすけど……?」
「このエロゲのパクリ美少女さ、伊吹からあのビン底眼鏡を取って、髪の色を同じにして想像してみ? 似てる、とか思えね?」
僕が体中に熱を感じたのは、きっと梅雨明けの猛暑の所為だけじゃ、ない。
「お……まえっ、失礼にも程があるぞ! 僕のレイナちゃんと伊吹なんかを一緒になんかするんじゃない! そもそも、伊吹なんかただのオタク友達で……あっ!」
ゲロっちまった、今、僕完全に自ら墓穴を掘った……っ! 世間一般で僕らオタクがどんな評価をされているか知っている。だからこそ、はるにさえもひた隠しにしていたのに。
“私たちは胸張ってオタクであるべきだぜ!”
不意に彼女の持論が脳裏に浮かぶ。僕の中で、あいつの価値を急騰させた屁理屈が、僕をはるから逃げずに止めてくれた。そして、それがはるの持論をも聞かせてくれた。
「昔と違うんだから、隠す必要ないんじゃね? まあ俺には理解出来ないがな。ただ、一つだけ言っておく。二次元のココロってのはプログラミングされてるけれど、三次元のココロってのぁ、その場その場で変わるんだぜ? 例えば、今この瞬間にも、飛び出しても追いかけてもくれないメグに対して、伊吹はどうココロが変わるかな、とか」
そろそろ、二次元だけじゃなくって、三次元と対話してみるのもいいんじゃね? と、最近彼女が出来たばかりのはるは、物凄い意味ありげににやりと笑うと
「来週からは、俺、デートに忙しくなるし、夏休みにもなるしな。来ないだろうから、伊吹に宜しく」
と言って出て行った。
二人とも、言いたい事だけ言ってとっとと帰っていきやがって。
そんな僕をあざ笑う様に、レイナちゃんが頬を赤らめ見つめていた。
******
(ここから暑さに参っている碧檎)
「まあったく、あの二人もなあ……見てる方がイライラするんだよ」
俺は恵夢の家の前にある大きな桜の木の下で呟く。
……ってか、暑い。一歩外に出てから無茶苦茶後悔した。夕方まで居る気だったのに、この一番暑い時間帯に外に出ちまった。目の前のアスファルトがじりじりと焼けている。この日陰から踏み出すにはまた別の覚悟が必要だった。
すげーこと叫んでたよな、あの女。信じられねえ。
……変な誤解はこっちも迷惑なんだがな、そんなこと彼女の耳に入ったら……俺、あいつらを絶対恨んでやる。
——問題は確実に恵夢にある。
俺はそう思った。
昔っから鈍かったからなあ、あいつ。
普通気づくだろ、こんな年頃になってまで、休日に友達と遊びもせずに自分の部屋に入り浸る女。
意識しないってのがおかしい。
まさか……本気で二次元の女にしか興味が無いってことは、ないだろうな?
さっき本人にも言ったけど、あのレイナちゃんだっけ、……俺からしてみれば、伊吹そのまんまじゃねえかと思うんだけど。
極度の乱視か? メガネかけてるのって近眼だからだよな? ……やっぱ歪んでるのは価値観?
考えながら、諦めて一歩踏み出したとたん、ふと妙な視線と悪寒を感じて、気配のする方を見る。
隣の家の門の影に人影。やはり……居た。
******
(nicoさまターン)
「へぇ、早いな。……やんなかったんだ」
「まあな、お前に上腕二頭筋を千切り取られるわけにはいかんだろ。つか、お前、なにか勘違いし……うわ!」
突然聞こえてきた人の声に、思わず我が輩は舌打ちしそうになる。なぜなら完全に眠りを妨げられてしまったからだ。本来なら容赦しないところだが、我が輩は大人。そこはぐっと堪えてみせる。
発言元、見れば1人は顔なじみの愛しの「いぶきちゃん」で、1人は驚くほど色の白い筋肉質の男。昨今、美白ブームが続いて久しいが、男のそれは少々白すぎで、それは『無し』だろうと思ってしまう。もう少し、日光浴でも日サロでも通って焼いてみたらどうだと少々おせっかいをやきたくなってくる。――無論、我が輩の言葉が通じれば、の話なのだが。
「「うわ!」って何だよ、「うわ!」って」
ケラケラ笑いながら、いぶきちゃんは美白筋肉のマネをしながら問うている。さすが我が輩のいぶきちゃん、モノマネが上手すぎる。そのしぐさに我が輩の心は大いに揺さぶられる。今日も、キュート。
「お、俺、猫ダメなんだよ。大嫌いなんだ!! 伊吹、頼むからそこの……その塀の上にいる奴、追い払ってくれ!」
「猫……?」
言いつつ、いぶきちゃんは我が輩を見上げる。少しばかり潤んだ瞳。いぶきちゃんと目が合ったという事実に、我が輩の心臓はばくばくと音を立てる。その素敵な君の瞳に乾杯したい。我が輩は強くそう思う。
「……ああ、ハチじゃん。おいで!」
いぶきちゃんは両手を我が輩に差し向けてくる。感動しすぎて涙が出そうだ。これは抱かれないわけにはいかないだろう。まだ心の準備ができてはいないが、精一杯かわいい声で「にゃあ」と鳴いてみせた。この声、彼女が気に入ってくれるといいのだけれど。
「ハチ、大きくなったなぁ」
白魚の手とは、きっとこういう手を指すのだろう。いぶきちゃんの手は白く柔らかく、そして暖かい。きっとこの手と同じく、心もホットにちがいない。いぶきちゃんの手は我が輩をそっと包み込み、やがてその胸へ……胸へ……と……。
――我が輩は確信する。いぶきちゃんは「D」だ。
「うわあ、キモい。よくお前、猫なんか抱けるな。つかその猫デブすぎじゃね? 横綱級」
美白筋肉は我が輩を見ながらそう言った。その眉はひそめられ、その目は汚い物でも見ているかのように細められている。
…『よく言うよ。キモいのはお前だろ』…
我が輩がもし人であるならば、この美白筋肉に間違い無くそう言っただろう。鼻につく、資生堂アネッサ・パーフェクトUVサンスクリーンA・SPF50+の匂い。現在最も効果の高い日焼け止めと言われるそれを、この美白筋肉は全身くまなく隅々にまでふんだんに塗りたくっている。我が輩は、お前はそこまでして焼きたくないのか、と問うてやりたい。――無論、我が輩の言葉が通じれば、の話なのだが。
「キモいなんて言うなよ。だいたいハチは恵夢ん家の猫だぜ? 知らないのか?」
「マジ? アイツんちの猫? このデブが?」
「そ。デブ言うなよ。デブだけどさ。お前の愛しの“恵夢くん”に、言いつけるぞコラ」
いぶきちゃんが我が輩の為に美白筋肉を注意してくれる。好きな女の子に庇われるなんて、思えば男にとってすごく幸せな事なのではないだろうか。少なくとも我が輩は昇天しそうなくらい幸せだ。
「お前なぁ、ホントいい加減にしろよな。何が「お前の愛しの恵夢くん」だよ。いいか、俺はゲイじゃねぇし、バイセクシャルでもない。この際言っておくが、彼女だっている。はっきりいって、お前のその勘違いは迷惑なんだよ。俺と恵夢の仲を疑うくだらねぇ事してる暇があったら、自分の事を考えろ。お前、恵夢が好きなんだろ? あ?」
「……なっ、何言って……」
「今さら隠すな。見てりゃ、バカでも気づく。お前、恵夢を誘惑して、あいつを二次元から現実に目を向けさせてやれよ。それが出来るのは伊吹だけだと俺は思う。頼むから頑張ってくれ。ホント、お前ら見てるとこっちがイラつくし」
いぶきちゃんの胸の鼓動が、ダイレクトに我が輩に伝わってくる。それにこの美白筋肉は気になる事を言った。かわゆいかわゆい愛しのいぶきちゃんが、あろうことかウチのさえない黒ぶち眼鏡小僧のことを好いている、と。我が輩的にはありえないと思う。なぜなら黒ぶち眼鏡小僧は極度のオタク、可憐で素敵ないぶきちゃんとは不釣り合いに決まってる。しかし、いぶきちゃんのこの胸の鼓動は尋常ではない。それはどんどん我が輩を不安に導いていく。
「あ、あた…し、……いや、私にそんな事、出来るはずがないだろ!」
「やってみなきゃ、分かんねぇだろ。とりあえず、髪を青く染めろとは言わないが、せめてそのダサいビン底眼鏡をコンタクトにしてみろよ。で、男言葉も今すぐ止めろ。いいか、これは絶対だ」
「な、何で私がそんな事! 第一、私、恵夢のことなんか好……」
「だからお前の気持ちなんかバレてるし。いいかげん素直になれ。つか、俺の言った通りにしてみろよ。恵夢のやつ面白いことになるぜ? 多分、な」
美白筋肉はそう告げ、「じゃあな、頑張れ」といいつつ去っていった。我が輩はようやく日焼け止めの匂いから解放される。そして我が輩を包み込むのは、いぶきちゃんのシャンプーの匂い。それから、形のいい「D」の胸。
「コンタクト……」
「にゃ?」
いぶきちゃんはそう呟いて、我が輩を元いた塀の上に「よいしょ」と戻す。我が輩は焦る。まさか美白筋肉の言う通りに、ウチの黒ぶち眼鏡小僧の奴めを誘惑する気なのではあるまいか、と。
「にゃぁあああああ」
我が輩は力の限りいぶきちゃんを呼ぶ。が、彼女は振り返りもせず家の中に入っていく。そしてすぐさまキャスケットをかぶり、出かけて行った。
我が輩はもう一度叫ぶ。
「にゃぁあああああああああー……」
――嗚呼神様。我が輩が、人間だったらよかったのに。
******
*****(ここからがヘタレ青蛙のパートです。短いです)***
「青春だぜ、まったく」
勢い良く出て行く彼女の背中を見送り、オレは自分に腹を立てていた。
何が「お前の愛しの恵夢くん」だよっ、何でそうなるんだよ。
だいたい、何でおれと息吹で恵夢を取り合うって事になるんだ? 普通男二人と女一人だったら違う展開だろうがよ。
ほんと、腐ってんじゃねーよ。
なんだかんだ言って、オレがアイツん家に行く理由。
それは……。
「おまえがいるからに決まってるじゃないか」
ニブイメグが、いつ気づくかどんなにハラハラしていたと思っているんだ。だけどあまりにも息吹が乙女で(あんな奴に乙女を感じるオレもどうかしてる)、オレは自分の思いを封印したんだ。
だから速攻で彼女を作って、それなりに楽しんでいる。
……いるんだからな。
そうだ、今が一番楽しい時だと自分で絶賛盛り上げ中なんだ。
健気なオレ。
それなのにまったく。
自分の人の良さに笑いさえこみ上げてくる。何、キューピットしてんだオレは?
これで、メグの野郎がそれでもさっき覗いたパソのエロゲー(レイナちゃんだっけ?)の女の方が
良いなんて言いやがったら。
そのときは――。
そのときオレは。
「オレが掻っ攫っちまうからな!」
空に突き上げる拳……と大声がアブラゼミの大合唱の中に吸い込まれていく。
嫌になっちゃうくらい暑くて青い空の下。
「ニャーッ!」
オレの決意表明を聞いたのは……くだんのデブ猫だけだった。
「ニャーッ!」
「うるせーよっ!このデブ!!暑苦しいんだよ」
オレはさっき息吹に抱かれていた(マジでむかつく)猫にビシッと指を突きつけた。
****************
(ここから携帯の文字容量に苦しむ愁真の文章です↓↓↓↓)
「ニャーッ!! 何だとコルアァァ! やっぱりこの色白マッチョ野郎! 我が輩の愛しの伊吹ちゃんを狙ってやがったのか!! 許すまじ!」
我が輩は気持ちが悪いほど色白なマッチョ野郎に飛びかかった。
しかし、意外にこの色白マッチョはすばしっこい、我が輩の攻撃をかわした。
うぅっ……メタボリックな腹が邪魔だ…しかしっ、そんなものは関係ない! 我が輩の愛しの伊吹ちゃんをこんな色白マッチョ野郎なんかにやれるかっ!
「うおっ! 何だっデブ猫! こっちくんなっ!しつこい! あっち行けって! あでででっ! 足を咬むな! いでっ! いでっ!」
離すものかっ!この気色の悪い色白マッチョめっ!
愛しの伊吹ちゃんはこんな色白マッチョ野郎や、黒縁眼鏡小僧なんかにやらんっ!
これは黒縁眼鏡小僧の分だ、くらえっ!!
色白マッチョ野郎は我が輩の牙から逃れようと、足を振る。その勢いを利用し、奴の顔目掛けて爪を立てた。
「ぎゃあぁぁっ! 何しやがんだっ! やめろっ! 」
色白マッチョ野郎の反撃をかわし、我が輩はその足で黒縁眼鏡小僧の元へ!
勢い良く、部屋に入ると黒縁眼鏡小僧こと恵夢は相変わらずパソコンに夢中である。
「ウロロロロッ……」
この野郎、何呑気にエロゲーやってやがんだ!!
おまえなんかにも絶対、伊吹ちゃんはやらんぞっ!!
くらえっ!!
我が輩は助走をつけて、恵夢の背に向かって走った!
あと少し……
あと少しで恵夢の体に我が輩の爪がかかろうかと言うとき……
「ん?……ハチ、どうした? 腹でも空いたのか? 」
と振り向いた。
こっ……
このっ……やっ…ろ………う。
「ゴロニァ~ン……ゴロゴロ…」
「なんだ? こいつぅ~甘えやがって~」
恵夢に喉を触られて、ゴロゴロする我が輩……
はっ!! なっ何やってるんだ、我が輩は……
*********
(これより袴姿の筋トレでカオスを感じようとしている水菜の文です)
何を我輩はこんな黒縁眼鏡小僧な恵夢の指に甘えているのだ!!我輩には使命があるのだ、愛しの女神伊吹ちゃんをこやつの魔の手から救い出さねばならぬと言うのに!!
「ほ~れほれほれ、あ・・・猫ジャラシあったかな」
「ニャアン」
しかし恵夢の巧みに動く指に翻弄される我輩、くぅ・・・このままでは堕ちる、堕ちてしまう!!
我輩の頭の中から伊吹ちゃんの姿が霞んで消えていく、こんな時に猫ジャラシなんて最終兵器を出されたら我輩は確実に殺られてしまうではないか。
耐えろ我輩!!この険しい猫社会に生まれて幾数年、これまで数多くの猫達を倒して立っている我輩のプライドを思い出すのだ!
「お、これでいいか、ほお~れ」
「ニャア!!」
こ、これは掃除用のハタキ!!目が、目が追ってしまう、手が動いてしまう!!
もはや風前の灯と言う時、この部屋入ろうとするノックの音がした。
「ん?」
恵夢の手が止まる、た・・・助かった。息絶え絶えの我輩を置いて恵夢はドアをじっと見ている。我輩もつられて見るのだが・・・そこには我輩の猫人生で尤も衝撃的な存在が立っていた。
い、伊吹ちゃんがコンタクトをしているではないか!!
「お、おっす・・・」
恥じらいながら挨拶をするわが女神、いやあれはもう女神ではない、あれは創造主そのもの!!なんと言う美しい目だ、あんな目で見られたら地獄の猫閻魔も一瞬で惚れててしまうだろう。
それはまさに至高の猫ジャラシ、猫缶のフルコース、猫の王国の女王さえ目ではない!
「・・・」
うむ、恵夢も見惚れているようだな、いくら鈍かろうがあの姿の前では無理も無い。
だがまさか本当に色白マッチョの言う通りコンタクトにして来るとは、伊吹ちゃんの恵夢に対する想いはこれほどまでだと言うのか。
我輩の心の中が急に冷めていった、どんなに言った所で我輩も猫なのだ。たとえ伊吹ちゃんが『D』でも美しくてもダサいビン底眼鏡をしていても恵夢への想いは変わらないのだ。
ならば我輩は彼らを見る猫として、一匹の猫として彼らの行く末を見届けるべきだろう、この想いが届かなくとも我輩は伊吹ちゃんの幸せを想い手助けするのだ。
しかし何所までいっても黒縁眼鏡小僧の恵夢は愚か者で、我輩にとっては極刑にも等しい台詞を吐き出した。
「BLのやりすぎじゃないか?目が腐った魚の様に死んでるぞ」
********
(↓泣きそうな光太朗です。どうなっても知らないぞう)
いってしまった瞬間に、後悔した。
大きく見開かれた伊吹の目から、ぼろりと涙がこぼれ落ちたからだ。
──僕はいま、いったい何を口にした?
驚いたのだろう、と思う。
普段は僕の眼鏡とあいつの眼鏡と、二重の眼鏡を通してしか、あの大きな瞳を見ていなかったから。
いや、もしかしたら、見たことなんてなかったのかもしれない。
実は傷つきやすいあの目も、女の子らしい格好なんて滅多にしない華奢な体躯も、きちんと手入れされている艶やかな髪も。
気づいてしまった。
いま、初めて。目の前の伊吹の存在に。
彼女は、涙を流しているというのに。
「な、なんだよ、冗談だろ! いつもみたいに返してこいよ、おまえも好きな金魂のセリフだろ」
動揺しながらも、いつもの言葉を吐き出す。
背に伝わる汗と、妙な後ろめたさとを感じながら、どうにかそれを表には出さないように。そうだよな、それにしてももうちょっといい方ってもんがあるだろ──そんな軽い返答を期待して。
伊吹は初めて何かに気づいたかのように、はっとした。両手で口元を押さえ、僕とは決して目線を合わせず、そのまま踵を返す。
「ま……──っ」
待て、といおうとしたのかどうか、それすらわからない。
僕の無防備な足下に、ハチがダイレクトアタック。あたりまえに運動不足な僕はそのまま床に顎をぶつけ、頭上のもっと遠くで、乱暴に扉の閉まる音がした。
*
オレは恵夢の家の前で、ヒンドゥースクワットに精を出していた。
デブ猫にやられ、一度はこの場を離れたものの、なんだか、どういうわけか気になって、また戻ってきてしまったのだ。「ごめん、急用」なんていう、怪しさ百パーのメールを彼女に送りまでして。自分で自分の行動に呆れる。
通行人や、もしかしたら出てくるかもしれない恵夢や伊吹に怪しまれないよう、カムフラージュも完璧だ。オレの汗、今日もいい香り。
ダダダ、と駆けてくる音がして、目の前で扉が開いた。
思わず隠れそうになったが、出てきた人影に目を丸くする。
伊吹だ。
初めて見るような、スカートスタイル……それに、オレのいったことを本当に実行したのだろうか、眼鏡をしていない。
なにより、彼女は泣いていた。
身体中が一気に熱を帯びた。オレはほとんど無意識に、伊吹の細い腕をつかんだ。
「おい!」
「──離せ、バカ!」
怒りさえ込めて、伊吹が濡れた瞳でオレを射抜く。 一瞬たじろいだが、オレはより一層強く、腕を握りしめた。
衝動を、ぐっとこらえる。引き寄せて、抱きしめてしまいたいのに。
「どうしたんだよ」
「うるさい! あ、あた、あたしは──!」
もともと上気していた伊吹の頬が、みるみる紅潮していく。
勢いをすべて飲み込んでしまったかのようなか細い声で、彼女は呻いた。
「恥ずかしい……──」
限界だった。
オレは乱暴に伊吹の顎を持ち上げ、かみつくように唇を押しつけた。
うう、し、心臓が……かゆい……!!
というわけで、文樹妃さま、お願い致します!!!
惚れそうだ、伊吹。ww
こんな可愛い子だったんだ~、知らなかった。(ぉぃ
愁真さんのナイスな猫振り、水菜さんの絶妙なラブ路線への誘導、そしてやはり光太朗さん、アナタやっぱり萌ツボ抑えてる、実はリア腐女子でしょう!m9っ`Д´)
拙blogの否定発言はこの際脳内削除です!
も、完結した暁には自分のblogに原文そのまま貼り付けてやるうううう!
伊吹萌ええええええ!!!
そして次はあの恋愛の女王・文樹妃さんな訳ですね?!
しかも、ちゅう直後からなんでつね?!?!
ヤヴェ、酔いまわって来た…。←コーフンし過ぎでつ★
……光太朗さん何でも書けるんですね……マジ尊敬します。
あ、文章の修正ありがとうございました!!
良かったよぉ。
こーゆー恋愛話に蛙が絡むなんて100%ありえんと思っていたのに感無量です。
光ちゃん、ありがとう。遥、男にしてくれて!!ただの筋肉フェチじゃないぞー!!
チューくらいなんだぁ!!
って・・・恋愛物の教祖にバトンタッチって
どこまでも美味しい展開に蛙はストーカーとなって(バトンの)見届けます!!
水菜さんから光太朗さんに回った事にも吹きましたが、お話もすげーおもしろかったです!
っていうか、ま、まさか美白筋肉・遥と伊吹ちゃんが、ち、チュウを……
私などより、べた恋向きっすよマジでーーー。
うがー!!
続きが気になるーーー!
文樹妃さんをさっそくストーキングします!
ごちそうさまでした!!!
& 執筆おつかれさまでしたっ。^^
えーと、光太朗さま……よくもやってくれましたね?(笑)
愛する光太朗さまから回ってきたので、やらざるを得ないじゃないですか~!!
このカオス、見かけてはいたもののあえて知らないふりをしてたのに……。(笑)
しかも、恋愛物教祖とか、そんな皆さん何を期待してくださっているんですか~!
本来なら嬉しいはずの期待が、お、重い……(大汗)
私、全然そういうオタ事情とか詳しくないんですよ?
ものすごいがっかりさせることになってもし、知りませんよ?
石投げとかなしですよ?(笑)
びくびく。
えーと、自分のブログに全文と私の続きを載せたらいいんですよね?
しばしお時間くださいませ。
ではでは。
げっへっへ、ありがとうございますw
息吹ちゃん、私の読んでる限りではかわいこちゃんでしたよ、ふつうに! けなげなイイコじゃないですか! 胸張ってオタクだし!(笑
え、い、いや、だから私は本当に腐女子ではないですよ!! その経歴もないですよ!! ちょっとしたオタクではありましたが、筋肉紳士の絡みにモエモエしてませんよ、マジですよ!! ──ああ、必死すぎてうさんくさい(涙
>碧檎さま
鼻血ーーー!!! なんと! そんな鼻血展開でしたか!? 私はもう、心臓かゆくてかゆくて><
な、なんでもなんて書けませんよ! 特に恋愛モノはもう限界です。一度中退してるんです、無理です、無理!! あとは文樹妃師匠に任せます><
あ、文章修正の件は、おちゃのこさいさいでごじゃります。ご丁寧にどうもです。
>青蛙さま
ええもう、ネコまっしぐらなみに王道まっしぐらです。こいう恋愛話に私が絡むのも120%ないと思ってました……世の中ってわからない……;
三角関係フラグが立ってるんだから、とことんまでやんなきゃね!! というわけで遥くんには頑張ってもらいました。いやもうこの際だからいっちゃいますが、頑張ったのは私じゃー! 恋愛モノは苦手なんじゃー!(笑
ご心配の通り、エランの時間がまるっとこっちに費やされました(笑 明日からまたネット消え気味ですー。
>nicoさま
ぃやったあ! nicoさまのぶっはーゲット!! よかったです、ありがとうございます><
ちゅうしちゃいましたね。ちっすですね。じ、自分が書いたとは思えない……! このコメント打ってる時点でリアルに鳥肌なので、ベタ恋を自分で書くなんてとんでもないです、nicoさまたち師匠ズに任せます;
文樹妃さまの続き、楽しみですよね! これだけみんなが楽しみにしてて、プレッシャーだろうなあ(汗
>文樹妃さま
すいませんっしたーーーー(土下座
だって、だってもう、投げっぱなしの恋愛路線を回せるのは文樹妃さましか>< ほらほら、みんな納得の走者チョイスですよ!! めっちゃ期待されてますよ!!(プレッシャーか/笑
プレッシャーだろうなあと思いつつ、すみません、もう全力で楽しみです、師匠!! うははーい>< さらりと相思相愛でもうテンションマックスです! らびゅーーーーん!!!