正直、すっかり忘れてました。先日思い出してまた忘れました。
いままた思い出したので忘れないうちに載せます。
今回は
アンケート 1
です。
本当は、グラフがきちーっとあるんですけど、重いわ貼り方わからんわで、全部削除しました。
もうあれですよ、がっつり読みたいかたがもしいらっしゃいましたら、一太郎添付ファイルでメールするのでご一報ください。
興味のある方だけ、以下つづきです。
長いです。
4-1. アンケート調査の概要
漢字,平仮名,片仮名といった表記をどのように使い分けるのか,また,表記の違いによってどのように文の印象が変わるのかを調べるため,アンケート調査を行った(巻末の資料を参照)。アンケートは大きく二つの部分,ⅠとⅡに分かれるが,Ⅰでは,文章の読み手としての意見を調査した。同じ文のうち一つの語に着目し,漢字表記,平仮名表記,片仮名表記の三つの表記法で記し,それぞれどのような印象を受けるかを調査したものである。Ⅱでは,文章の書き手としての意見を調査した。( )内に,漢字表記,平仮名表記,片仮名表記のうち,適するものを選択することによって,表記の区別の傾向を調べたものである。文体,使用されている語,質問のなかで焦点となる語によって,どのように回答が変化するかを調査した。文体は,一つの語につき,論文・説明文,小説地の文,会話文の三種類を例文として取り上げ,それぞれ二例ずつ,合計六例の文について問うた。
また,Ⅰ,Ⅱ共に,創作活動を行っている回答者数人にインタビューをし,一つ一つの問いについて,なぜその回答にしたのか,どのような印象を受けるか,を調査した。以下の「4-2.アンケート調査の結果・分析」は,それらの意見も反映させた分析を記している。
回答者の性別,年齢,生活状況等の違いにより,回答の内容が変わってくることを考慮し,アンケートの冒頭に年齢,性別,職業,読書の頻度,インターネット使用の頻度,創作活動の有無等を調査する項目を設けた。年齢は,若者世代と親世代に大別し,結果をまとめた。それぞれについて考察した結果,性別による違い,年齢による違いがもっとも参考になると考えたので(これについては「4-3. アンケート結果のまとめ」に詳しく記す),以下の分析ではその二つの属性に関わるグラフを示す。男女別のグラフは,全体数を分かりやすくするために,回答ごとのグラフにまとめる。男女,世代別のグラフは,それぞれのカテゴリ(男性・若者世代,女性・若者世代,男性・親世代,女性・親世代)によって,どのように回答が変化するかを視覚的にわかりやすくするため,カテゴリごとのグラフにまとめる。
アンケートは,144人の回答者にご協力頂いた(無効回答数4,有効回答数140)。うち,男性68名(若者世代49名,親世代19名),女性72名(若者世代55名,親世代17名)である。高校生,大学生を中心とし,30歳までを若者世代とし,40代,50代を中心とした31歳以上60歳までを親世代とした。若者世代は,愛知県の高校生,愛知県,三重県の大学生を主としている。なかでも,愛知教育大学,三重大学の学生の占める割合が大きい。親世代は,若者世代回答者の両親が多く,愛知県在住の会社員,主婦等を中心にしている。主として,友人を介してアンケート調査を依頼したために,若者世代が大半を占める結果となってしまった。
生活状況については,「小説,文芸雑誌をどれぐらい読みますか」という質問に対して,「月に10冊以上」-3名,「月に5~9冊」-3名,「月に3~4冊」-16名,「月に1~2冊」-32名,「2,3ヵ月に1冊」-54名,「その他(ほとんど読まない)」-32名と,読書量は全体的にあまり多くないといえる。「漫画,ファッション誌,情報誌等をどれぐらい読みますか」については,「月に10冊以上」-19名,「月に5~9冊」-33名,「月に3~4冊」-34名,「月に1~2冊」-36名,「2,3ヵ月に1冊」-12名,「その他(ほとんど読まない)」-6名。「インターネットを利用していますか」については,利用していないと答えた回答者は24名,利用しているのは116名。利用者のうち,「ほぼ毎日利用している」-55名,「週2~3回程度利用している」-25名,「週1回程度利用している」-25名,「月1回程度利用している」-11名と,使用率の高さが伺えた。また,何らかの創作活動(仕事関係,または趣味で,小説,漫画,エッセイなど)をしていると答えたのは23名であった。
調査期間は,2003年10月から11月の約2ヶ月である。
4-2. アンケート調査の結果・分析
(Ⅰ-ⅰ-①)
質問
1 「ああ,寒い」
2 「ああ,さむい」
3 「ああ,サムイ」
*1~3のうち,違和感のある表記はありますか。
アンケート結果
│ │ない │1 │2 │3 │
│男性 │9 │1 │11 │54 │
│女性 │16 │0 │9 │53 │
│ │ない │1 │2 │3 │
│男性 若 │9 │1 │7 │39 │
│女性 若 │13 │0 │8 │40 │
│男性 親 │0 │0 │4 │15 │
│女性 親 │3 │0 │1 │13 │
3が圧倒的に多い。気温としての「寒い」を想像して1~3を読んだ場合,3の片仮名表記に違和感を覚えるのだろう。表記の形そのものをおかしいと感じたのならば,これ以降の質問の回答として3が多く出るのはおかしい。「ない」という回答は,3と比べれば圧倒的に少なくなってしまうが,表記そのものの形としておかしいかどうか,という質問の意図をもっと明確にしていれば,もう少し違った回答結果が得られたのではないだろうか。アンケート結果を見ても,やはり一番馴染みのある表記は1の漢字表記であるということがわかる。
意見として,片仮名表記は外国人の台詞のように感じる,というものが多かった。また,うけを狙った発言が笑いを取れず,一瞬白けた空気が流れる状態を表現する際には,片仮名表記をするが,この場合は「サムイ」ではなく「サムい」と表記する,という意見も多く見られた。全体を片仮名にするのではなく,普段漢字表記にする語幹部分だけを片仮名表記にするということのようである。
(Ⅰ-ⅰ-②)
質問
1 「ああ,寒い」
2 「ああ,さむい」
3 「ああ,サムイ」
*1~3のうち,どれが一番寒そうな印象を受けますか。
アンケート結果
│ │1 │2 │3 │
│男性 │54 │7 │7 │
│女性 │54 │0 │18 │
│ │1 │2 │3 │
│男性 若 │39 │6 │7 │
│女性 若 │41 │0 │15 │
│男性 親 │15 │1 │0 │
│女性 親 │13 │0 │3 │
1が大部分を占めているが,3という回答もいくつか見られる。3と答えたのは,女性の,特に若者世代が多い。Ⅰ-ⅰ-①にも関連するが,やはりストレートに外気の冷たさ,気温としての「寒い」を表現するのは1の漢字表現であるという結果になった。
(Ⅰ-ⅰ-③)
質問
1 「ああ,寒い」
2 「ああ,さむい」
3 「ああ,サムイ」
*1~3のうち,どれが一番寒くなさそうな印象を受けますか。
アンケート結果
│ │1 │2 │3 │
│男性 │4 │24 │40 │
│女性 │2 │37 │33 │
│ │1 │2 │3 │
│男性 若 │3 │22 │27 │
│女性 若 │2 │32 │22 │
│男性 親 │1 │2 │13 │
│女性 親 │0 │5 │11 │
Ⅰ-ⅰ-②と全く逆の質問になるので,やはり1という回答はほとんどない。2と3で大きく意見が割れる結果となった。若い女性の回答に2が多く見られるが,他は(男性:若者世代,男性:親世代,女性:親世代)3が多い。片仮名表記にすることで,どこか白々しい,現実感のなさが付加されるのだと考えられる。また,平仮名にはやわらかい印象があり,そのやわらかさが寒さを和らげる方向に働いたのだろう。
(Ⅰ-ⅰ-④)
質問
1 「ああ,寒い」
2 「ああ,さむい」
3 「ああ,サムイ」
*1~3のうち,発言者が一番若いと思うのはどれですか。
アンケート結果
│ │1 │2 │3 │
│男性 │4 │25 │37 │
│女性 │4 │35 │33 │
│ │1 │2 │3 │
│男性 若 │4 │22 │26 │
│女性 若 │4 │25 │27 │
│男性 親 │0 │5 │11 │
│女性 親 │0 │10 │6 │
これも,2と3で意見が割れた。これは,これ以降の若さを問う質問全てに共通して言えることだが,「若さ」をどういう観点で捉えたか,ということに大きく左右されているのではないだろうか。というのは,前述したように平仮名表記はやわらかさを表すので,やわらかさ→幼さを連想する。対して,片仮名表記は最近の若者言葉を彷彿するため,いわゆる若者を連想する。どちらも「若い」という表現になるために,最初に連想した方を,または考えた末にどちらがより質問の意図に沿うかを汲んで回答とする,という現象が起きたのではないだろうか。要するに,曖昧な質問になってしまったのである。これはどういう意図で聞いているのか,幼い子と若者とを連想して,どちらを書けばいいか悩んでしまった,という声を多く聞いた。これについては,アンケートの不備が否めない。
ただ,やはりどちらにしても,1の漢字表記からは,若さは連想しないようである。
(Ⅰ-ⅰ-⑤)
質問
1 「ああ,寒い」
2 「ああ,さむい」
3 「ああ,サムイ」
*1~3のうち,気温とは関係ないことを言っていると思うものはありますか。
アンケート結果
│ │ない │1 │2 │3 │
│男性 │5 │3 │13 │57 │
│女性 │8 │1 │9 │59 │
│ │ない │1 │2 │3 │
│男性 若 │4 │3 │9 │43 │
│女性 若 │7 │1 │6 │45 │
│男性 親 │1 │0 │4 │14 │
│女性 親 │1 │0 │3 │14 │
圧倒的に3が多い。片仮名表記にすることで,前述した,うけを狙った発言が笑いを取れず,一瞬白けた空気が流れる状態を表現する場合の表記として受け取られたようである。片仮名にすると,自体一つの単語のように感じられる,という意見もあった。また,戦争中のようで恐ろしい,という意見もあった。戦時中を表した詩のなかに,全てを片仮名表記にしたものが多く見られるので,そういった印象づけがされているのだろう。片仮名表記にすることで,漢字表記よりも連想する意味の幅が広がることは確かなようである。
(Ⅰ-ⅱ-①)
質問
1 「明日が締切か。困った,困った」
2 「明日が締切か。こまった,こまった」
3 「明日が締切か。コマッタ,コマッタ」
*1~3のうち,違和感のある表記はありますか。
アンケート結果
│ │ない │1 │2 │3 │
│男性 │16 │4 │16 │38 │
│女性 │27 │2 │14 │33 │
│ │ない │1 │2 │3 │
│男性 若 │11 │4 │12 │28 │
│女性 若 │22 │2 │10 │24 │
│男性 親 │5 │0 │4 │10 │
│女性 親 │5 │0 │4 │9 │
3がもっとも多いが,「ない」という答えも多く見られる。1はほとんどない。3に違和感があると答えたのは,女性よりも男性が多く(「ない」という回答は男性より女性が多い),女性の方がより片仮名について許容があると考えられる。
意見として,漢字→平仮名→片仮名の順に気持ちに余裕が出てくる,というものがあった。片仮名になると,「困った」と言いつつも本当は困っておらず,気軽に言っている,実は楽しんでいる,という意見も多い。実際に困っているときに,「コマッタ」とはしない,という意見が多数だ。片仮名表記に違和感を覚えるとした回答者の意見には,コマッタという言葉は日本語には存在しない,表記そのものがおかしい,というものがあった。こういった類の意見は,親世代回答者に多く見られた。
例文とした会話文自体が,「困った,困った」と二回続けて言っており,「困った」と一回よりも軽い気持ちで言っている印象が強いため,かえって重い印象となる漢字表記では不釣り合いだ,という意見もあった。
(Ⅰ-ⅱ-②)
質問
1 「明日が締切か。困った,困った」
2 「明日が締切か。こまった,こまった」
3 「明日が締切か。コマッタ,コマッタ」
*1~3のうち,どれが一番困っている印象を受けますか。
アンケート結果
│ │1 │2 │3 │
│男性 │56 │3 │10 │
│女性 │60 │6 │6 │
│ │1 │2 │3 │
│男性 若 │42 │1 │9 │
│女性 若 │44 │6 │6 │
│男性 親 │14 │1 │1 │
│女性 親 │16 │0 │0 │
圧倒的に1が多い。困った,という語の本来持つ意味は,漢字表記がもっとも顕著に表すということになる。平仮名表記は,見た目のやわらかさから余裕が感じられ,片仮名表記になると,実は困っていないのでは,という意味が付加されるようである。
(Ⅰ-ⅱ-③)
質問
1 「明日が締切か。困った,困った」
2 「明日が締切か。こまった,こまった」
3 「明日が締切か。コマッタ,コマッタ」
*1~3のうち,どれが一番困っていなさそうな印象を受けますか。
アンケート結果
│ │1 │2 │3 │
│男性 │1 │21 │47 │
│女性 │1 │20 │51 │
│ │1 │2 │3 │
│男性 若 │1 │19 │33 │
│女性 若 │1 │16 │39 │
│男性 親 │0 │2 │14 │
│女性 親 │0 │4 │12 │
3がもっとも多く,次いで2,1についてはほとんど回答がない。Ⅰ-ⅱ-②の結果に沿っている。
続きます。