質問
1 「明日が締切か。困った,困った」
2 「明日が締切か。こまった,こまった」
3 「明日が締切か。コマッタ,コマッタ」
*1~3のうち,発言者が一番若いと思うのはどれですか。
アンケート結果
│ │1 │2 │3 │
│男性 │5 │34 │29 │
│女性 │5 │36 │31 │
│ │1 │2 │3 │
│男性 若 │5 │28 │19 │
│女性 若 │5 │31 │20 │
│男性 親 │0 │6 │10 │
│女性 親 │0 │5 │11 │
2,3共に多く,1はほとんどない。2は,平仮名が幼さを連想させるため,3は,片仮名が若者言葉を連想させるためだと考えられる。3よりも2の方が多いのは,「コマッタ」の場合,年齢によるというよりは意味の違いで口にしている印象が強いため,片仮名=若者言葉と安易に直結しないのだろう。
(Ⅰ-ⅲ-①)
質問
1 「嫌い。もう,顔も見なくない」
2 「きらい。もう,顔も見たくない」
3 「キライ。もう,顔も見たくない」
*1~3のうち,違和感のある表記はありますか。
アンケート結果
│ │ない │1 │2 │3 │
│男性 │37 │4 │23 │11 │
│女性 │56 │0 │12 │5 │
│ │ない │1 │2 │3 │
│男性 若 │30 │3 │17 │7 │
│女性 若 │42 │0 │11 │3 │
│男性 親 │7 │1 │6 │4 │
│女性 親 │14 │0 │1 │2 │
「ない」がもっとも多い。前述の「寒い」「困った」に比べると,片仮名表記も違和感なく受け入れられるようである。実際,雑誌や小説,漫画等でも,これらの表記はすべてよく見かける。平仮名表記や片仮名表記に違和感を抱く回答者も少なくはなく,やはりもっとも一般的な表記が漢字表記であることは間違いない。
(Ⅰ-ⅲ-②)
質問
1 「嫌い。もう,顔も見なくない」
2 「きらい。もう,顔も見たくない」
3 「キライ。もう,顔も見たくない」
*1~3のうち,どれが一番嫌っている印象を受けますか。
アンケート結果
│ │1 │2 │3 │
│男性 │42 │2 │24 │
│女性 │43 │3 │26 │
│ │1 │2 │3 │
│男性 若 │32 │2 │18 │
│女性 若 │35 │2 │19 │
│男性 親 │10 │0 │6 │
│女性 親 │8 │1 │7 │
もっとも多いのは1だが,3も多く見られた。漢字表記は,固い印象があり,「嫌い」という語の本来の意味が一番強いと考えられる。平仮名表記は,やわらかい印象となるため,この場合は「嫌い」の度合いを低める作用が働く。片仮名表記になると,今度は片仮名自体に冷たい印象があるために,「嫌い」の意味がより冷たく,辛辣なものに感じられるのだろう。
(Ⅰ-ⅲ-③)
質問
1 「嫌い。もう,顔も見なくない」
2 「きらい。もう,顔も見たくない」
3 「キライ。もう,顔も見たくない」
*1~3のうち,どれが一番嫌っている度合いが低いと感じますか。
アンケート結果
│ │1 │2 │3 │
│男性 │5 │45 │18 │
│女性 │3 │48 │21 │
│ │1 │2 │3 │
│男性 若 │3 │38 │11 │
│女性 若 │1 │40 │15 │
│男性 親 │2 │7 │7 │
│女性 親 │2 │8 │6 │
前述したように,平仮名表記はやわらかい印象を与えるために,2という回答が群を抜いて多い結果となった。漢字表記にすると本心から嫌っている印象を受けるが,平仮名表記だと少しけんかをしただけ,ぐらいのニュアンスにとれるようである。しかし,ここでも3という答えが見られる。これは,Ⅰ-ⅱ-3「明日が締切か。コマッタ,コマッタ」と同様,片仮名表記にすることで,本気で言っているわけではない,軽く言っている,というニュアンスが付加されるために,ここでも語の持つ意味の度合いが低いと判断されたようである。片仮名表記は,少しかわいい印象がある,女性が恋人とけんかをして拗ねたように言っている,甘えた感がある,など,女性の台詞としての,特に恋人同士のやりとりとしての意見が多く見られた。
(Ⅰ-ⅲ-④)
質問
1 「嫌い。もう,顔も見なくない」
2 「きらい。もう,顔も見たくない」
3 「キライ。もう,顔も見たくない」
*1~3のうち,発言者が一番若いと思うのはどれですか。
アンケート結果
│ │1 │2 │3 │
│男性 │2 │19 │47 │
│女性 │5 │13 │54 │
│ │1 │2 │3 │
│男性 若 │2 │17 │33 │
│女性 若 │4 │10 │42 │
│男性 親 │0 │2 │14 │
│女性 親 │1 │3 │12 │
3がもっとも多いという結果になった。2も見られるが,同種の若さを問う質問のなかでⅠ-ⅲ-④だけは2という回答が少ない。平仮名表記は幼さを連想させるため,若さに結びつく結果が多くなるが,この例文そのものが幼さと結びつけにくいものであるため,2よりも3という回答が圧倒的に多くなったのだと考えられる。
(Ⅰ-ⅳ-①)
質問
1 良子は我が侭で有名だ。何でも思いどおりにいかないと気が済まないのだ。
2 良子はわがままで有名だ。何でも思いどおりにいかないと気が済まないのだ。
3 良子はワガママで有名だ。何でも思いどおりにいかないと気が済まないのだ。
*1~3のうち,違和感のある表記はありますか。
アンケート結果
│ │ない │1 │2 │3 │
│男性 │20 │40 │3 │6 │
│女性 │36 │30 │1 │9 │
│ │ない │1 │2 │3 │
│男性 若 │14 │34 │2 │3 │
│女性 若 │30 │25 │1 │4 │
│男性 親 │6 │6 │1 │3 │
│女性 親 │6 │5 │0 │5 │
「ない」という回答と,1という回答が多い。平仮名表記や片仮名表記はほとんど違和感なく受け入れられるようだが,漢字はかえって見慣れず,おかしいとする意見が多かった。なかでも,若者世代の男性が,多く漢字表記に違和感を持っている。女性の方が,許容が広いようである。
2の平仮名表記は,良子は幼い子どもでかわいい印象があり,3の片仮名表記になると2よりも少し成長した子ども,または手の付けられない子ども,大人の女性という印象がある,という意見がいくつか見られた。また,近代文学などでは漢字表記がされていたために,1は現代よりも前の時代の令嬢を連想した,という意見もあった。
(Ⅰ-ⅳ-②)
質問
1 良子は我が侭で有名だ。何でも思いどおりにいかないと気が済まないのだ。
2 良子はわがままで有名だ。何でも思いどおりにいかないと気が済まないのだ。
3 良子はワガママで有名だ。何でも思いどおりにいかないと気が済まないのだ。
*1~3のうち,どれが一番わがままな印象を受けますか。
アンケート結果
│ │1 │2 │3 │
│男性 │10 │12 │46 │
│女性 │11 │13 │48 │
│ │1 │2 │3 │
│男性 若 │7 │7 │38 │
│女性 若 │6 │9 │41 │
│男性 親 │3 │5 │8 │
│女性 親 │5 │4 │7 │
1,2は少なく,3が多いという結果になった。漢字表記は見慣れないために対象外となったのだろうか。平仮名表記は,やはりやわらかい印象があるために少なく,片仮名表記がもっともわがままの度合いの高い印象を与えたようである。片仮名の持つ冷たいイメージも関係しているのだと考えられる。
(Ⅰ-ⅳ-③)
質問
1 良子は我が侭で有名だ。何でも思いどおりにいかないと気が済まないのだ。
2 良子はわがままで有名だ。何でも思いどおりにいかないと気が済まないのだ。
3 良子はワガママで有名だ。何でも思いどおりにいかないと気が済まないのだ。
*1~3のうち,どれが一番わがままの度合いが低いと感じますか。
アンケート結果
│ │1 │2 │3 │
│男性 │21 │36 │11 │
│女性 │19 │41 │12 │
│ │1 │2 │3 │
│男性 若 │15 │30 │7 │
│女性 若 │18 │30 │8 │
│男性 親 │6 │6 │4 │
│女性 親 │1 │11 │4 │
やはり,2という回答が多い。平仮名の持つやわらかさは,わがままの度合いを下げる方向に働いている。1という回答も見られる。見慣れないために「わがまま」というイメージに結びつきにくいということが,理由としてあげられるだろう。
(Ⅰ-ⅳ-④)
質問
1 良子は我が侭で有名だ。何でも思いどおりにいかないと気が済まないのだ。
2 良子はわがままで有名だ。何でも思いどおりにいかないと気が済まないのだ。
3 良子はワガママで有名だ。何でも思いどおりにいかないと気が済まないのだ。
*1~3のうち,「良子」が一番若いと思うのはどれですか。
アンケート結果
│ │1 │2 │3 │
│男性 │2 │23 │43 │
│女性 │5 │30 │37 │
│ │1 │2 │3 │
│男性 若 │2 │15 │35 │
│女性 若 │5 │23 │28 │
│男性 親 │0 │8 │8 │
│女性 親 │0 │7 │9 │
3と2が多く,1という回答はほとんど見られない。ここでも,幼さを連想する2の平仮名表記よりも3の片仮名表記の方が多くなったのは,例文のニュアンス自体が良子の年齢を幼い子どもより上の世代を連想させやすいためではないかと考えられる。
まだ続きます。