DARKER THAN BLACK -黒の契約者-
というアニメがあります。
わりと最近……? 去年?
前回記事でちょこっと触れたら、青蛙さまが食いついてくださったので、ほとんど青蛙さまピンポイント攻撃ですけどもSSを掲載します。
版権モノの二次創作です。
莉啓の中華一番と設定モロかぶりですけど、そこはほら、二人とも料理人だししょーがないよね、ってことで。
興味のある方だけどうぞーー><
『愛憎のエプロン』
深夜──
二人と一匹は、音のない公園にいた。ヘイはベンチに、インはさびれたブランコに。マオは、ヘイとは違うベンチで、眠るように。
遅れて現れたホァンは、全員がそこにいることに、一瞬だけ満足そうに方眉を上げた。すぐにいつもの仏頂面に戻り、タバコに火をつけ、淡々と告げる。
「仕事だ」
決して大きくはない声だったが、充分に彼らに届いた。そのために来たのだ。聞き逃すはずがない。
その先を促す必要はなかった。だれもが黙って、待つ。
じらすつもりもないのだろうが、ホァンはゆっくり煙を吐き出す。それから、どこか億劫そうに、懐からチラシのような紙を一枚、取りだした。
黒い紙だった。一行目には、極秘、の文字。
「……まさか、それに出ろと?」
マオが、むくりと身体を起こす。見た目と多少ギャップのある、低く通る声で問う。
是、とホァンはいわなかった。その代わり、他に何があるのかと、疲れたような目がいっていた。
「限界なんだそうだ。だれかさんの食費がかさむ一方だからな。全員参加で優勝をもぎ取ることが、今回の仕事ってわけだ」
紙に踊る文字を確認して、ヘイは、かすかに眉根を寄せた。
『極秘! 裏の世界の料理大会、愛憎のエプロン! 優勝者には一千万!』
読み上げてしまったマオが、完全にテンションの下がった様子で、ぐたりと地面に頬をつける。インは、静かに透き通るような声を発した。
「エプロン……持ってない……」
ホァンの話によれば、『愛憎のエプロン』は裏の世界では知る人ぞ知るイベントらしかった。なぜそんなものに、と思わないではなかったが、仕事といわれてしまっては、彼らに断る権限はない。
準備期間が与えられ、一週間後の大会当日──
いまにもくずれそうな廃ビルの奥の、不釣り合いな長い階段を下り、『会場』にたどり着いた彼らは、一様に言葉を失った。
一言でいうなら、派手。
「さあ! 今年もやって参りました、愛憎のエプロン! 今回の優勝者は一体ダレだ? 参加資格は、このイベントを知っていて、エプロンを着用していること! ただそれだけでゴザイマス!」
仮面をつけ、ふりふりのメイド服を着た司会らしき女は、マイクを片手に甲高い声を張り上げた。じゃじゃーんと効果音が鳴り、ホールに並んだ挑戦者にスポットライトがあてられる。
参加者は十数人。老若男女が集まっていた。ネコまでいる始末。
「……ヘイがいないようだが」
ペットショップに売っている、ピンクのエプロンを巻き付けたマオがぼそりとつぶやき、どこで手に入れたのか、昔懐かしの割烹着姿のインは、無表情で答えた。
「代わりに……李瞬生が……来る……」
「は?」
マオが目を見開く。隣にいた参加者である若者が、え、いまこのネコしゃべったんじゃね?と注目してきたので、慌てて「にゃあ」と鳴いた。無用な騒ぎを避けるための、マオのネコとしての処世術だ。簡単そうに見えて、これが意外と、声色の加減が難しい。
「さあ、今回は齢九十のおじいさんから、天才ネコちゃんまで、大変バリエーション富んでおります! ──え? 飛び入り参加? 道に迷ってここに?」
メイド司会者は、耳打ちされた情報を受け、右手を振り上げて飛び入り参加者を迎え入れた。
「偶然にも迷い込んでしまった、偶然にもエプロンを着用していた留学生の李瞬生くん、特別に飛び入り参加デース!」
その姿に、マオと、観客席のホァンは、思わず目を逸らした。
新妻御用達の、フリル満載エプロンを身につけた李が、どうもすいませんとかいいながらホール入りしてきたのだ。
偶然会場にたどり着くまでならまだしも、偶然そのエプロンをつけていたというのはどうなのか。──どうなのか!!
激しく疑問を抱いた観客も多いようだったが、それよりも多くの人数が、その甘いマスクに騙された。まあいいか、そういうこともあるよネ。
「システムは実にシンプルです! 挑戦者は入場の際に渡された番号の順に、料理を審査員のもとへ持ってきていただきます。五人の審査員は、すべての試食が終わったところで、審議して優勝者を決定しまーす! それでは、始めー!!」
ぼわわーん、とドラが鳴らされ、挑戦者たちは一斉に料理を作り始めた。マオは八番、インは九番。ヘイ──李は飛び入り参加なので、どんじりの十六番。
設置されたキッチンで、それぞれ一心不乱に包丁やら鍋やらをふるっている。
ホールの中央にはあらゆる食材が並んでおり、何を使うのも自由。制限時間は一時間。
李の包丁さばきと、難なく中華鍋をふるう姿に、観客席からも、審査員席からも感嘆の声が漏れた。
「すばらしいですね、飛び入り参加の李クン。いかがですか?」
メイド司会者にマイクを向けられ、審査員のひとりはしたり顔で感想を口にした。
「たとえるなら、中華料理店のコマーシャルですね。いや、それすら凌駕している! もはや、彼の動きは神域に達しているのだ!」
「そーですねえ。今回注目の、ネコちゃんの動きはいかがですか?」
違う審査員にマイクを向ける。年配の女性は、さらにしわを深くした。
「残念だけど、調理器具が持てないんじゃあ、料理できないわねえ」
「まったくそのとおりですね~」
にゃあにゃあと奮闘するマオは、ネコ特有の身軽さで調理台には上れたものの、一切の調理器具を持つことができなかった。それどころか鍋に落ちて、親切心(?)で鍋を火にかけようとしたインに殺されかけた。
にゃあの合間に、ときおり「くそっ」とか混ざるので、周りの参加者がいぶかしげに見ている。
「あの、銀髪の女の子は、どうですか? ときどきネコちゃんの手助けをしているようですが──」
「何もしていないように見えますねえ。どうなんですかねえ」
──そうして、あっという間に、一時間が経過した。
それぞれの挑戦者は、料理の腕には覚えがあるようだったが、審査員の舌も厳しく、それほど高評価を得た者はいないようだった。
そうして、八番。マオの番だ。
「ネコちゃん、料理の説明をお願いします」
「にゃあ」
「はいわかりました! それでは試食をどうぞー!!」
審査員たちは、口々にうなった。
「なんというか……」
「まるで空気のような、この食感」
「食べているのか食べていないのか、ともすればすべてが幻なのではないかと思わせる奥深さが素晴らしい」
哲学的な感想をいただいた。
九番、イン。
「好み……に、合ってると思う……」
審査員五人それぞれに、違うものが提供された。
彼らは、感動に打ち震えた。
「私の大好物の、ぷっちりぷりん!! しかもデカサイズ!」
「おお、懐かしい、うまいぼうのメンタイ味じゃ……!」
「あー、ここのコンビニ弁当大好物なんだよねー」
超・高評価。
インにとっては、準備期間にそれぞれの好物をリサーチすることなどたやすい。
料理してないけど。
あれよあれよと審査が進み──
十六番、李瞬生。
「……あの、これは?」
問われ、李はにこやかに答えた。
「回鍋肉、四川風麻婆豆腐、北京ダック、棒々鶏、黄金チャーハン、小龍包、杏仁豆腐です。どうぞ」
しかし、皿の上には何もなかった。
彼のほっぺたに、ご飯粒がついていた。
一時間は、彼にとっては長すぎたのだ。
「どうぞ、というあの笑顔がいいですね」
「いやあ、微笑ましいですなあ」
なぜか高評価。
そうして、十六人分の試食が終わった。
数分待たされ、審査員長らしき人物が、マイクを手に取り中央に進み出る。
挑戦者たちも、観客も、息を飲んだ。
ごほん、と小さな咳払いののち、審査員長はゆっくりと口を開いた。
「優勝者は────なし、だ」
会場が静まり返った。
だれもが目を見張った。
「諸君、忘れてはいないかね。これは、愛憎のエプロン──……しかし、諸君らのエプロンからは、愛憎は感じられなかった! そう、そこには愛しかなかったのだ! だが悔やむことはない、これは素晴らしいことだ! さあ、皆で、この結果を讃えようではないか──!」
観客席から、ホァンが、李に何ごとか合図を出した。
しかしそれを見るまでもなく、李はそっと仮面を手に取った。
深夜──
二人と一匹は、音のない公園にいた。ヘイはベンチに、インはさびれたブランコに。マオは、ヘイとは違うベンチで、眠るように。
遅れて現れたホァンは、全員がそこにいることに、一瞬だけ満足そうに方眉を上げた。すぐにいつもの仏頂面に戻り、タバコに火をつけ、淡々と告げる。
「仕事だ」
出された紙に書かれていたのは、『極秘! 裏の世界の仮装大会、仮装優勝者決定戦!優勝者には一千万!』
──組織を辞めたいと、切に彼らは願った。
おしまい☆
くだらねぇぇぇぇとかいわないで><
これは、親愛なる友人がダーカーにどっぷりはまって同人誌を出すまでになったとき、良かったらSS書きませんか、と声をかけてもらって書いたものです。
当時私はダーカーを一話と二話しか見ておらず、友人の持ってきてくれた資料とアツイ語りを元にこれを書いたので、だいぶ偏見だらけになっていると思います。
イメージ違うやい! ってことでしたらもう平謝りで>< もももももうしわけない><
そして実はいまだに全話見ていないという事実。
大好きですよ、ダーカー! 雰囲気抜群で!!! 音楽かっこいいしね、もうこれはいうまでもない感じだけどね!! 菅野さんバンザイ!!
あ、書いてたら見たくなってきたー>< DVD見るぞ。
あのアニメはアクションシーンが好きです。まあ、そういう話しなわけだから、戦闘シーンが凝ってるのは当然でしょうけど。
光ちゃんもFF好きなんですねー。安心。
二次はちょっとって方、案外いますからね。
面白いのに、二次。
インが料理なんて・・・と思っていたのでこれも○。マオがフリフリエプロンだなんて・・・・◎。光ちゃんのピンポイント攻撃にまんまとやられてしまいましたよ、蛙。
光ちゃん、最後まで見てね。すげー面白いから。
面白いけど結構謎を残してます。
ゲートの事とか解説してほしい・・・。蛙は良く分かんなかった(泣
ああ~もう一回みたいなあ。